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難産でした。てこずりました。
シリアスが苦手なせいで、続かないのかと思ってましたが、あいつ等が離れたくないから終わらなかったんか~い。とツッコミを入れたくなりました。
でも、去年のリクエストが一個終わった(終わってないのがまだ残ってる・汗)
恐らくリクエストした方も、もう忘れてしまった事であろうと推測されます。
すみません。
という訳で、反動です。
苦労性のフェリオさんが読みたい方は続きへご案内~。
終業のチャイムと共に、廊下に出たフェリオを呼び止める声。ああ、またかと思いつつ振り返えれば、思った通りの人物だった。
「考えてくれたか?」
「期待してくださるのは有り難いんですが…。」
「そうか。」
簡単なやりとりだけど、相手が落胆しているのが手に取る様にわかるから少しだけ申し訳ない気分になる。
「気が変わったら、いつでも来てくれ。歓迎する。」
それでも笑顔を絶やさず、爽やかに立ち去る相手には尊敬の念を感じずにはいられなかった。何度無下に断った事だろう。自身に未練が有る分だけ後ろめたさは倍増した。
「…あれ、弓道部の部長だよね?」
通りかかったアスコットが声を潜めて話し掛けて来た。そんなに寂しそうな顔をしていただろうかとフェリオは思い、敢えて笑みを浮かべてみせる。
「部活入らないの?」
「仕方ないだろ、中学ならまだしも高校ではそんな余裕ないんだから。」
奨学金で通っている身としては、成績を下げる事などもってのほかだ。それでも、付き合いの長いアスコットは俺の気持ちを察するのだろう。小さな声で言葉を続ける。
「でも、勿体ないよ。全国大会まで出るレベルなのに…。」
「中学では、だろ?高校になれば、もっと強い奴はいっぱいいるぜ。」
未練は振り切るに限る。
エメロードが結婚するなら本気で一人暮らしも考えなければならないし(勿論反対されてるけど)、そうなればアルバイトは必死。どう考えても部活をしている時間なんて皆無だ。
それに…。
「やべ、こんな時間じゃないか。タイムバーゲン始まっちまう! じゃあな、アスコット。」
「うん、また明日。」
苦笑したアスコットが手を振る後ろから、仲良し女子(海と光と風)が歩いてくるのが見えた。
(海がいるぞ)と、動作で教えてフェリオは、その場を後にする。なにやら、話し掛けられたアスコットが声を上擦らせているようだったが、頑張れよという声援は心の中だけに留めて置く。
何しろ、これから時間を争うタイムバーゲンなのだ。
◆ ◆ ◆
数時間後、フェリオはすっかりと顔馴染みになった主婦の方々との戦闘(?)を終え、戦利品を片手にストアのドアを潜っていた。
実は級友達がエメロードが作っていると信じて疑わない弁当は、フェリオはの手作り。姉の分もこなす厨房男子だ。
理由は自分の口は自分で養わないと空腹だっただけの話だけど、自分で作るなら材料にも拘りたいと思うのは、嫌いじゃないからだろう。
この店は安いが品も良いのだとフェリオはしみじみ想う。
レジの周辺も混む時間帯だったので、お釣りを握りしめたまま出て来た事に気付いたけれど両手に荷物を持っていたせいで、手間取った。
通りがかった自転車を避けた拍子に、5円玉が転がった。
5円あれば、特売のもやしだって買えるのだ!慌てて、手を伸ばすも奴は丸い!もたついている間に距離を開けられた。
側溝に落ちる寸で、横から伸びてきた指が5円玉をすくい上げた。脚元から視線を上げて、フェリオはうっと息を飲んだ。
亜麻色の巻き髪がふんわりと揺れる。
しゃがみ込んだ膝がすっと上がり、綺麗な仕草でスカートの裾を抑える。
そこにいたのは、級友の鳳凰寺風だった。
俺は、負けず嫌いだ。だとえエコバッグであろうとも、学校一、似合う男だという自負があった。…あったが、気になる娘に見つかったのには、赤面した。
「夕餉のお買物ですか?」
にこりと微笑んで、風は5円玉を渡してくれる。
どこから見られていたのかわからないけれど、財布に小銭が入っているなんて随分生活感溢れていると思われた事だろう。フェリオは羞恥に赤くなった顔を見せたくなくて、ついつい目を反らしてしまう。
「サンキュ…、お前は?」
「塾が終わりましたので、帰宅するところですわ。でも、」
風はクスリと笑って、手を差し出した。白くて綺麗な掌だなぁ、なんて妙な感心をして見つめてしまう。そんなフェリオの様子を風は遠慮ととったようだ。
「随分重そうですのね、お手伝い致しましょうか?」
「え、!? いや、いいよ。重いし。」
慌てて首を横に振ると、何が可笑しかったのかクスクスと笑った。
「では、鞄の方をお持ち致しますわ。財布お仕舞いになった方がいいと思いますし。」
エコバックと学生鞄を片腕にぶら下げ、小銭と財布を握りしめているのだと気が付いて、それはもう顔から火が出そうになる。
感謝の言葉もそこそこに、風の好意に甘えて鞄を預けて財布にお釣りをしまうと買い物袋を持ち直す。今度は風に手を差し出した。
「ごめん、助かった。」
「どういたしまして。あ、少しお待ちいただけますか?」
風は鞄を戻すと、くるりと身を翻して自動ドアを潜っていった。待つという程の時間でもなく、風は小走りに戻って来た。手にはこのストアのオリジナル商品である紙パックのジュースを持っていた。
「少し休憩しようと思っていたんです。奢りますから、ご一緒して頂けませんか?」
風はそう言ってくれたけれど、俺を気遣ってくれているのは丸分かりだ。ストアで戦闘を繰り広げたせいで(いやただのバーゲンだけど)額に汗が滲んでいるし、制服はしわくちゃなはずだ。
それに、値段が高いと遠慮すると配慮して、安いものにしてくれているのが心憎い。
心遣いってこうだよな、とフェリオは自分の若輩加減を認識した。
近所の公園で、ベンチに腰掛け夕日を眺める。並んだ肩がくすぐったいくて複雑な気分だ。
たわいもない話をすれば、クスクスと風が笑う。
可愛いなあと思って眺めていれば、ふいに頬を赤くした。俺は慌ててストローの先に救いを求める。
「私の顔に何かついてますか?」
困った表情でそう問われ、キスしたくなりました。とも言えずに、フェリオも頬を赤くして黙り込む。
沈黙しか残らなかったけれど、それはちっとも居心地の悪さを感じ無かった。
「…今度は、俺が奢るから一緒に飲んでくれるか?」
ぼそぼそと呟いた言葉に、風はこくりと頷いてくれた。
◆ ◆ ◆
帰宅途中は、雲の上だった。けれど、ふわふわの俺の気持ちを裏切るように、家の台所は真っ暗だ。
鍵は掛かっていないのに、と蛍光灯のスイッチを入れれば、ふたり掛けのダイニングテーブルにエメロードが腰掛けているのがわかった。
ちょっと、心臓に悪いぞ…。
「どうしたんだ、姉貴…!?」
冷蔵庫に戦利品を収めるべく彼女の前を移動する。途端、俯いていたエメロードが脇腹に飛び掛かった。
ぐえという無様な叫び声を上げるも、姉の顔が泣き顔だった事で息を飲んだ。
「フェリオ。」
「な、何?」
碧眼を涙で潤ませた姉は、いきなり眉尻を上げる。
「私、ザガートと結婚なんかしないわ!」
なんですと!?
あんぐりと開いた弟の口に意識を取られる事なく、エメロードは早口に捲し立てた。
少々興奮気味な事と、勢いが良すぎる為に意味がいまひとつ聞き取れないが、どうやら(ザガートと結婚するのはやめる)(あんな人だとは思わなかった)という意味の言葉を繰り返しているようだった。
「け、喧嘩でもしたのか?」
フェリオは両手で買い物袋を持ち上げたまま、自分にしがみつく姉に声を掛ける。出来れば自由にして欲しい。でないと、食材が痛むだろう。
しかし、フェリオの願いも虚しく、姉はくしゃりと顔を歪めて腕の力を強めた。
「私、一生独身でいるからいいの!!!」
いいわけないだろう!?
己の胴体を抱き締めてわんわん泣く姉に困惑していると、唐突に携帯が鳴りだした。画面に表示されたのは、見たこともない番号。
それでもフェリオにはある種の予感があった。躊躇う事なく受信を押す。
『家にいるか?』
聞こえてきた声はランティスのもので(ザガートも良く似てるけど、愛想加減が全く違う)、もうどうでもいいやと思う。
なんでコイツが俺の携帯番号を知っているのかなんて、追求する気もわかなかった。
「…エメロードが一生独身とか言ってるけど、アンタ心当たりがあるか?」
『ザガートは俺の横で、死んでお詫びと言っている。』
間髪入れずに返った答えに、フェリオは目眩を覚えた。
「一体何が起こってるんだ?」
辛うじて告げた言葉に、ランティスはただ沈黙した。
…続くんですよね。これが(笑)