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更新お知らせ・お返事・ぶちの日々
2025/04
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12月まで後二か月という事実が私を打ちのめしそうです。
俺の本気を見てみるか(大したこと無)という気持ちで頑張ろう…。

つい最近支部で小説を読むことを覚えました。毎日凄まじい数が更新されるので、途中まで拝見していてしおりを挟み忘れ、一体どれを読んでいたかわからない…なんて事態が毎夜のごとく起こってます。
学ぶくんとケイコちゃんから縁遠い生活なので、凹みますね~。
人気の作品はほくほく状態で読めても、品薄な作品はどこでも品薄だな…とつくづく。でも満たされると書かない傾向なのでのんびり出来て嬉しいかも。
タイバニは面白いや。(笑


さて、続きに苦労性フェリオさんです。

 別段寒い訳じゃない。陽気は春のうららだったし、きっちり上着だって羽織っているのだ。
 強いて言うなら、心と懐が寒い。
 仕方無いのはわかっていても、どうして俺が(わざわざ)買い出しに出てやらなければならないのだ。エメロードならまだしも、何故アイツにと思うと納得出来ない。
 俺が出来るせいぜいの抵抗は、自分用の菓子を幾つも買って帰る事だったけれど、これもリスクが無い訳じゃない。
 アイツが払わないと言ったら、(俺の奢り)と言う恐ろしい未来が待っているのだ。あまりの恐怖にフェリオは思わず身震いをする。
 …意地になって買いすぎたかもしれない…。
 そろそろと後悔がフェリオの頭を重くしてきた頃、アパートが見えてくる。部屋の窓が明々としているのを見ると、ほっこりと嬉しくなる自分には呆れた。
 
 まあ、いいか…。

 存外自分は単純なんだと思う。首を竦めてクスリと笑った。
 少しだけ足取りが軽くなったけれど、そう言えば今日はほのぼのとした気分が訪れると荒んだ出来事がやってくる日ではなかっただろうか?
 不吉な思いが脳裏に浮かんだ途端、ドンと扉を閉める音が路上に響いた。つられて振り返ったフェリオは、こちらに突進してくる人影に目を丸くする。
 彼は、長い髪を振り乱し自分の名を呼んだ。

「フェリオくん!!」

  彼の背後には、路上に置きさられたミニクーパーが、運転席側のドアを全開にして健気に暖機運転を続けていた。ボボボッと鳴くエンジン音が不満そうに聞こえた。
 
「ザガートさ…ん??」
 走り込んで来たかと思えば、急に立ち止まり慣性の法則で後方に倒れ込みそうになって踏み止まる。そして、両手を掴まれまま包み込む様にして、膝を付かれた。
 事態を飲み込め無いフェリオが目を白黒している間に、頭を垂れたかと思う男は再び勢い良く顔を上げた。
 
「申し訳ない、この間は偉そうな事を言って於いて、エメロードを涙させるなど私は万死に値する!」

 は、万死?…!?

「えと、そんなに思い詰めなくてもいいんじゃないか、と…俺…。」
 きっとたわいない痴話喧嘩だと踏んで、そろそろと手を引き抜こうとすれば、反対にガッシリ掴まれた。
「ありがとう、君もエメロードと同じで優しいんだね。」
 結構思いこみの激しいタイプなのだろうか。でも、そういうところは、姉と相性が抜群かもしれない。
 フェリオは妙に納得し、ここは、落ち着いてゆっくりと話しを聞くべきだろう思い直した。
 常に一人で納得して、鼻息を荒くする姉の存在が目の前の男にだぶる。
「姉はどうして怒ったんですか?」
「彼女が折角作ってくれた昼食について、私がいらない感想を告げてしまったのだ。」
 昼…?それって、差し入れの弁当だろうか。そう言えば、今日は珍しく姉が作ってくれたけど。
「普段彼女が食べているものと味が異なっていたものだから、それをつい…。
 どんなものでも、エメロードが作ってくれたの食事に不満はなかったのだけれど。私の不用意な一言が彼女を傷つけてしまった。」
 
 …え、と…それって…。

 点と点が線で繋がった予感に顔を歪めたフェリオは、駆けて寄ってきた姉を見つけて息を吐いた。そして、ザガート越しに声を発する。

「姉貴は俺の作った弁当を、自分が作ったと偽ってサガートさんに喰わせてたのか!」
「失礼ね!私が作ったなんて一言も言ってないわよ!」
 顔を真っ赤にして声を発してきた姉に、どうやら誤解も解けたようだと気が付いた。後ろからランティスが歩いて来たから、あちらの話しを聞いてくれたのはアイツなのだろうとわかる。

「今日作ったお弁当は正真正銘、私が作ったんだからね!」
 
 ザガートに向けて放っただろう姉の言葉に、彼はやっと納得した表情で俺を解放して、姉を抱き締めた。
「それでも、君を傷つけた事にかわりはないだろう?」
「だって、ザガートがたまたまあげたおかずの味を覚えているなんて思ってもいなかったのよ。」
「エメロードから貰ったモノの味を、私が忘れるはずないだろう。君から貰ったものは全て覚えているよ。」
「ザガート…。酷い事を言った私を許してくれる?」
「私は許したいんじゃない、愛してるよエメロード。」
 そうして、態度を豹変させ、らぶらぶになったカップルは、迷惑を掛けたと謝ったのちに、ピンク色のオーラを振りまきながら、深夜のドライブへと旅立って行った。

 そうしてふた、り取り残される。
 フェリオは歩道と車道を隔てるガードに腰掛けた。ランティスもそれに習ったので、コンビニ袋を漁り、相手に珈琲を渡してやった。
 自分も買ってきた炭酸飲料に口をつける。そして、溜息を付く。

「…普通気付かないか、あんなこと…。」
 ぽつんと呟いたフェリオに、ランティスは首を横に振る。
「ザガートは、優しいがぼんやりだ。
 大学時代、俺でもわかるほどに猛アピールをしていた女がいたが、アイツは全く気付いていなかった。通常から普通に優しいので当然相手は誤解し、最後は修羅場になった。
 それでもアイツは気付かなかった。」
「…それは大変だったな…。」
 さっきの様子を見ていれば、巻き込まれたんだろう出来事が簡単に想像が付き、フェリオは心底気の毒にという表情で隣りの男を見る。
 そして、もう一口飲み込んでから思い出した事をランティスに話してやった。
「エメロードも大学時代の友人と好きな相手が被ったらしくて、騙しただの、利用しただの、絶交だのとそしりを受けたらしいが、全部誤解だからって無かった事になっていた。」
「…それは…。」
「だと思う…。」

 ふたりが沈黙したのは、話題の友人がどうやら同じ人物ではないか気付いたからだ。お互いしか見えていないエメロードとザガートの間で、さぞ辛い想いをしたのだろうと考えれば、他人事とも思えない。
 フェリオは思わず、名も知らない姉の友人に、心の中で両手を合わせる。
(迷わず成仏してください。)
 
 そして特別に居心地が悪くもない沈黙続く。
 ほっこりとした気持ちになったのはきっと疲れているからだろう。フェリオは少々赤面しそうな思考を打ち消して、考え直す。

「俺は(いわしの梅煮)が好きだ。」
 
 …はぁ?

 唐突に語るランティスをジロリと睨み上げたフェリオは、瞼を閉じてフンと鼻を鳴らした。
「また、今度な。」
「ああ。」
 クスリと笑う気配がしたけれど、気付かないふりだ。少しだけ、相手に懐いたかもなんて、有り得ない。

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