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2025/04
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お仕事も駆け込みが多くなった今日この頃。
不思議な事に、雑念が無い時ほど頭に何にも浮かばないのですな。
妄想我が意人生かもしれない。
(いやそれどうなんだ)

 熟睡したのは随分と久しぶりだ。
 真っ白な枕とシーツ、こんな綺麗なものを見たのは随分と前。セフィーロが平和だった頃の話だ。ザガートを腕に抱いて、泣きそうに顔を歪めたエメロードの姿が脳裏に浮かぶ。
『…フェリオ』
 姫の唇が自分の名を象る。
 沸き上がるのは従順な部下としての気持ちだけではない事が俺にはよくわかっていた。決して成就することのない想いだと知っていた。それでも、心は馬鹿正直に躍り虚しい希望を湧かせる。

『貴方だけが、頼りなのです。』

 潤んでいく翡翠が愛おしく、それは同時に背徳でしかない。俺はただの…

「…姫。」
 無意識に伸ばした指先が感じる、確かな触感。
ビクリと手を引くフェリオに、彼女によく似た翡翠と金髪の少女がニコリと微笑む。

「姫とは光栄ですわね。」
「お前…誰だ。」
 意識がはっきりしてくれば、周囲が自分の記憶と一致するものは無い。警戒心を露わにしたフェリオに対して、少女の態度は変わらなかった。ただ、(日本語ですわね)とだけ呟くのが聞こえる。
 そうして、椅子に腰掛け両手を膝の上に置いたまま、彼女はニコリと微笑んだ。
 ふわりとした淡い色の衣服がどことなくエメロードを思わせるものの、眼鏡の奥で輝く双眼は似ても似つかない。
 強い輝きを秘めた翡翠。
「人に名を聞く前に、ご自分で名乗るべきではありませんか?」
「…。」
「と言っても、混乱なさっている方には無理かも知れませんわね。私は鳳凰寺風と申します。ここは私の家ですわ。」
 そこまで聞いて、フェリオは肩を竦めて息を吐いた。小馬鹿にするような薄笑いが顔に貼り付く。
「物好きだな。
 どこの金持ちのお嬢様かは知らないが、こんな奴を拾って家人に咎められたろう。」
 いいえ、と風は笑みを崩さない。 
「ご心配には及びません。
 姉は家を出ておりますし、両親は仕事で出掛けておりますわ。通いの家政婦さんは先ほどお帰りになりましたし、暫くは来て頂かなくて大丈夫ですとお伝え致しましたので、当分家には私ひとりです。
 お気遣いありがとうございます。」
 見当違いに礼を告げられ、フェリオは声を荒くした。 
「…っ、お前、警戒心が無いにも程があるだろう!見知らぬ男とふたりきりとか…!」
「あら、屋根をぶち壊して、気絶なさっていた方など私怖くありませんわ。」
 口元に手の甲を当ててコロコロと笑う風に、フェリオはただ絶句する。
と同時に、思い出した失態に顔が茹で上がった。
「何で知って…!」
「ずっと、見ておりましたもの。
 最初はゆっくりと降りていらしたのに、どうして急に落下なさいましたの?」
 風の問いに暫く呻るような声を出してはいたが、にこにこと微笑む顔に諦めたように口を開いた。
「…魔法が使えなくなったからだ。」
「まぁ、魔法!魔法とおっしゃいましたね?
 確かに、魔法をお使いになれる方を見たことはありませんわ。
 でも、貴方はお使いになられるのですね…いえ、ここは(なれた)と過去形で申し上げるべきでしょうか?
 それで今はお使いになれるのでしょうか?」
 身を乗り出して来た風の勢いに押され、フェリオは何かを試しみようとするがふるりと首を横に振った。
「…いや…駄目みたいだ…。」
「残念ですわ。でも、魔法…素晴らしく非日常的な言葉ですね。」
 片手を頬に当てて感嘆の息を吐く風に、フェリオは顔を歪める。
「此処は、魔法を使わない世界なのか?」
「推察致しますに、貴方が急に使えなくなった事も鹹味して、使わないのではなく使えない世界だと思いますわ。
 昔々魔法を使っていたという歴史なぞ授業では習いませんでしたし、魔法がなくても…。」
 そう言うと、風はベッドサイドに置かれたテレビをリモコンで付けて見せる。
何もない板に突然映し出された映像や声に、フェリオは息を飲んだらしい様子が楽しい。
 ついでに遮光カーテンもリモコンで開けて見せた。
 急に現れた真っ白な雪に覆われた景色は朝日に照らされて輝いていた。フェリオは目を丸くする。
「機械文明が発達している世界というところでしょうか?」
「キカイ…?」
 使い古された古典SFに良く似たシチュエーションは、現代人である風には還って新鮮に映る。彼の反応のひとつひとつが楽しい。
 ベッドの上に胡座をかき、腕組みをしながら頭を捻っていたフェリオだが、何かを諦めたように大きな溜息を吐いて風を見た。
「礼を言わなければならないと思うが、空から振ってきた得体の知れない奴をよく連れて帰って面倒を見る気になったな?」
「そうですわね。
 拾ってしまった子犬は飼い主が見つかるまで責任があるようなものでしょうか?」
「俺は子犬か!?」
「ぐったりしていらした時は、哀れな子犬のようでしたけれど元気になられて良かったですわ。今はキャンキャン吼えていらっしゃるところにも見えますわ。」

 …勝てる気がしねぇ…。

 にこにこと笑顔の風に、フェリオは反論を取りやめ白旗を掲げる。
「………俺の名はフェリオだ。」
「ではフェリオさんとお呼び致します。普通に発音出来るお名前で良かった。
 朝食を準備して頂いておりますので、ご一緒に如何です?」
 スルリと椅子から立ち上がり、風は扉へとフェリオを誘う。微笑む彼女の瞳は、やはり想い人と重なって、フェリオは大きく顔を歪めた。



風ちゃんに勝てないフェリオが好きなんだ。うん(笑)

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