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更新お知らせ・お返事・ぶちの日々
2025/04
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お久しぶりです。
追記しようしようと思いつつ、東のエデンを見て寝る毎日をすごしておりました。
という訳で、続きにバレンタインをひっかけたものでした。

おはようございます。車が動かない程度の雪が降り積もっていて途方にくれたぶちです。
出雲大社の屋根を公開しているので是非見に行ってみようと思っていたのですが、断念ですな~。東北や北海道にくらべれば、別段雪の壁が出来る訳でもないので少ないものですが、寒いし…
風情はあると思いますけれどもね。古事記1300年らしくて色々イベントのお仕事もやらせて頂いているので大きな声では言えないけれど…普通の田舎ですぜ(ぼそり
そうそう、某様の日記で拝見していた小説を一巻読む機会があったのですが、面白かったです。ネットで連載なさってたんですね。確かに私でも読みに行くわと思いました。でも、物語が完結してるようだったのが、あれ?ってなってしまいました。
年度末に向けて、お仕事やら私事で忙しくなりそうですが、たま~に更新する程度には書いておこうかな、とも思います。
需要がないのは承知の上なので、その範囲内って事で・笑

 ふと気づけば、聖バレンタインと魔法騎士がよんでいる日が近い。
厨房に籠もり、懸命に何かを作っているプレセアの様子に見て見ぬふりをすること、それがクレフの日課になっていた。
 彼女が何を作っているのかなど思慮を深くせずとも思い当たるが、問うのも無粋なはずだ。長い刻を連れ添うように過ごしてきた相手。空気のような存在というのも言葉が悪いけれど、彼女が寄り添ってくれるのが当たり前になって久しい。
 愛しく感じない訳などなくとも、つい当たり前になってしまっている想いが僅かに、綻ぶ感覚があった。 
 就寝する前になれば、自分が入れたハーブ茶を彼女が飲みにくるだろうと書物の頁を繰りながらゆったりと椅子に腰掛けていれば、扉を叩く音がする。
 けれど、開いた扉の前に立っていたのは、待っていたプレセアではなく夜半を過ぎたというのに、未だ正装したまま王子の姿だった。 
 既に寝着になっていたクレフは己の非礼を考えたが、此処で王子に退室を願う方が余程礼にかなっていないはずだと思い直し、部屋へと迎え入れた。 

「どうなさったのですか?」
 普段よりも控えめなノック音と、部屋へ入ってからもガリガリと後頭部を掻き視線を惑わせるフェリオにクレフは首を傾げた。
 問いかけた後も、あ~とかう~とか口を歪ませた後、大きく息を吐きフェリオは顔に緊張を漲らせる。
「ご相談があって参りました。」
 コクリと頷き、クレフはフェリオを私室の椅子に座るよう勧めるが、フェリオは首を横に振った。やはりその表情は真剣そのもので、クレフは眉を顰める。
「一体、何があったというのですか?」

 概ねセフィーロの治世は上手くいっている。
トラブル続きではあっても、皆が根気よく諦める事なく対処し最低限の難で済んでいた。それでも、不満が上がってこないはずもなく、苦情係は自然とフェリオの仕事になっていた。
 人当たりの良さと、柱の実弟であり王子という立場を上手に利用する彼の対処は良好だった。だが、彼なにりに深く思い悩む事があったのだろうか?

「いや、相談っていうか…報告になるのでしょうか。」
 そいして一度言葉を途切れさせ、フェリオは意を決した様子で口を開いた。
「フウを妊娠させてしまったのかもしれません。」
 クレフはわずかに遅れて、(そうですか)と答える。
 フェリオとフウが想い合う同士であることは周囲には周知の事実である上に、フウは年若いが聡明で賢い娘。王子の妃となっても申し分ない人物。
 けれど、クレフが驚いたのは彼等の会話も態度もゆるく、性交渉の艶めかしさをあまり感じた事がなかったせいだ。特に、フェリオは幼い頃から知っているせいもあり、それなりに歳を重ねていたとは言うものの、未だ子供のような認識があったからに他なら無い。
「導師…?」
 酷く不安気な声でフェリオが問いかけてくるのに、クレフは慌てて顔を向けた。
「どうぞ、お続け下さい。」
「この間セフィーロに来たフウから相談されました。規則正しかった月の物が今月はまだ来ないそうです。」
 どうであろうとも、俺が責任を取るつもりではあるのです。」
 強く言い切った言葉に、男として大人としてのフェリオの心懸けに思えた。先程、子供だなどと思っていた言葉に失礼だったと考え直す。
 しかし、言葉の後に躊躇う風をみせたフェリオに、クレフは首を傾げる。

「何か、あるのですか?」
「…異世界では、フウと同年代で親になるものは少なく、その、処理をしてしまう事も多いとフウは言っていました。薬でもって身体に傷を残す事も殆どないそうです。
 中には産み、育てる者もいるそうですが、その為には彼女は学校を辞めなければならないそうです。」

 自分の事ばかり考えて申し訳ありません。と口にしながら、風は学校を辞めてしまうことで夢が遠のいて行くのが怖いと顔を青くしていた。両親にどう説明をすべきかとも。

「俺とフウを繋ぐ命なら死なせるようなこと本当はしたくない。」

 けれど、彼女は基本異世界の人間であり、従うべき規則は彼女の世界のもの。彼女自身が生まれ、過ごす世界でフウを生き辛くさせる事など出来ない。

「俺は、どうしたらいいのかと…。」
 先程責任は取ると、強く言い切っておきながら、フェリオは狼狽えた様子を覗かせた。
クレフは、フウと息を吐いてから言葉を続ける。
「迂闊でしたな。そういう行為をすれば、子を為す可能性は最初からあった事。先にフウの世界の話を聞くなりしておくべきでした。」
   
 はい、と頭を垂れる様子は、普段小言を食らっている王子と大差なかった。

 大人のようでいて、それでもまだ子供で。クレフの心に不可思議な感情が浮かび上がる。
そして、想いを振り切るように、ふるりと首を横に振る。

「此処でいくら思案していてもどうにもならないでしょう。
フウが子を為しているのかどうか、いつわかるのでしょうか?」
「来週まで待って、月の物が来ないようだったら病院へ行ってみると。そうすれば確実にわかると言っていました。」
 確定するまでセフィーロには顔を見せないとフウは言っていたとフェリオは付け加える。
それまでに、聖バレンタインとやらがあったはず。ウミやヒカルには悟られ、心配させたくないというフウの心遣いなのだろうかとも思う。
「兎に角、待つしかありませんな。どんな結論になろうとも、私と王子でフウの御両親のお怒りを受けねばなりませんね。」
「導師、それは。」
 クレフは戸惑う表情のフェリオに、にこりと微笑んでみせた。
「フウと王子の問題とは言えども、私は貴方の後見人だとも思っております。貴方の責任は私の責任にもなりましょう。共に詫びるのが筋というものです。」
 少しだけ安心した様子の王子を、しかしクレフはやんわりと脅しつける事を忘れない。
「フウの父君にボコボコに殴りつけられるかもしれないかもしれませんが、身から出た錆です。
 異世界なので治癒魔法も十分に効かないことも十分考えられるので、今から身体を鍛えておくことをお勧めしておきます。」
 反省してます。と小さく呟いたフェリオに、クレフは苦笑した。


 バレンタインを数日過ぎた週末、フウは頬を赤らめながらクレフの部屋を訪れた。敢えてなのだろう、フェリオは扉の外へ残されていた。
 渡しそびれましたわ。と差し出された包みを受け取って、クレフは苦笑する。
「では、何事も?」
「はい。」
 申し訳ありませんでした。お騒がせしてしまって。深く頭を下げた風の様子は、普段と何も変わっているように思えず、クレフはふっと言葉を口にする。
「王子の心を試すつもりだったのか?」
 クレフの問い掛けに、風はふるりと首を横に振った。
「そんな気持ちは無かったのですが、結果的にそうなってしまったのかもしれませんわ。」
 申し訳なさそうに俯く風の様子に、クレフは失礼な事を聞いたと詫びた。
「王子がフウが随分と心配していたと言っていたものだから、いらぬことを聞いてしまった。」
「いいえ、私も本当に子供だったと思い知りましたわ。
…俺がすべての責任をとると仰ってくださったので、やっと色々な事に頭が回るようになっただけですわ。私、一人では何も出来なかった。」
 俯く風の肩に手を置くと、クレフは笑みを浮かべる。
「王子も中々に混乱していらっしゃいましたが、貴方の父君にドゲザする覚悟程度はお持ちのようすです。今頃は大きく胸をなで下ろしていらっしゃるはずですが。」
 目を丸くした風にふっと笑みをこぼし、クレフは戸の外へと風を即した。
「そして、私とフウが何を話しているのか、気が気でないでしょう。」
「はい。」
 綺麗な笑顔と会釈を残し、フウが扉を開けるのと同時に、眉を寄せたフェリオの顔が扉の間から見えた。
それでも、風の顔を見て安心したように笑みを浮かべると、フェリオもクレフに軽く会釈をして扉を閉じた。
  
「やれやれ。」
 盛大なため息をつきながら、ドサリと椅子に座り込んだクレフの耳にクスクスッという笑い声が聞こえてきた。
「ああ、もう出てきていいぞ、プレセア。」
 はい、と笑みを浮かべたプレセアは、お疲れでしょうからとお茶をお入れいたしますわと、茶器をテーブルへと運んだ。
 陶磁器から揺らめく湯気を眺めていると、またクスクスッと笑う。
「導師も、一緒にドゲザなさるおつもりだったのでしょう?」
「無論だ。やらずに済んで安堵したよ。」
「此処数日、本当に王子の父君のようでしたわ。
 弟子と子供は似ているだろうとよく仰っていましたが、私には少し違う様子に思えましたから。」
 香しい茶が入ったカップを置き、誰よりも自分を知っている女の言葉にああ、と思う。

 お子さまをもうけられないのですか?と術師達に問われる事がよくあり、多くの弟子を育ててきたのだから同じものだと答えていたことに気がついた。
  
 弟子は皆可愛い。
 その将来は酷く心配なものではあるし、常日頃の態度も気になりついつい口を出してしまう事も多い。己は子供をもうけた事はないが、きっと同じ様なものだと感じていた。
 けれど、今回の王子の一件には明らかに違う感情があった。

 幼い頃の思いでばかりが鮮明で、随分と子供扱いをしていたけれど、自分の見知らぬ間にずっと、思っていた以上にずっと大人になっていた事に対しての驚き。
 それでも頼りない部分があり、自分に手助けを求めてくれる事に対して嬉しいと感じる不思議。
 愛しいけれど我が手を離れていくのが不愉快のような、純粋に自分を超えて技術を上げていく弟子達に向ける感情とはまた違う、いつまでも囲い込みたい気持が不可思議な感覚を揺り動かす。

「これが、親心…というものなのか。」
 
 クスリと笑い、クレフは机に置かれた包みを見つめた。
魔法騎士達と一緒にプレセアがくれたもの。
(長年側で仕えてきたのですので、今更恥ずかしいものですね)と口に出しながらそれでも微笑む彼女にクレフは頬を緩ませる。
 長い刻の間考えた事も無かったけれど、弟子ではなく、子供を彼女との間にもうける事もまた新たな幸せもような気がして、クレフもまた頬を緩ませた。 
 

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