忍者ブログ
更新お知らせ・お返事・ぶちの日々
2025/04
< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


こちらに成響で、折込にガイピオです。
いつもどおりの散文ですが、七夕気分だけ味わってやってくださいませ。
時間がなくて、ブログ更新で申し訳ありません。

そして、私信ですがメールありがとうございます。お返事遅くなっててしまってすみませんが、仕事の疲れが吹っ飛びそうなほど嬉しかったです!!

それから、それから拍手も、コメントも本当に嬉しいです。ありがとうございました!




成響

 飾り気のない事務所に七夕の笹飾りを持って現れたのは、男の視線を集める為じゃない。可愛らしいお嬢さんの歓喜を聞きに寄ったのに、そこには男しかいなかった。
 弁護士と元弁護士。
「生憎とみぬきは出掛けてるよ、牙琉検事。」
 相変わらず察しの良い元弁護士は、僕の顔を見てにやりと笑う。目を眇めて挑むように笑いながら、気怠い。
 そこが好きだったなんて、思ったところでどうなるというのだろう。
こうして顔を合わせていたって捏造の疑惑を受けた元弁護士と、兄にその片棒を担がされた検事という意外関係性などないというのに。
 僕が黙り込んで、気まずい雰囲気になったからだろう。取り繕うように王泥喜が声を掛けてくる。
「でも、みぬきちゃん帰って来たら喜びますよ。笹なんてよく手に入りましたね。」
 感心されれば、気分が乗らないはずもなく、僕は笑顔を彼に向けた。
「そう、折角の七夕だからね。彼女の喜ぶ顔が見たいじゃない?」
「アンタらしい言い草ですよ。」
「おデコくんだって、喜んでくれるだろ?」
 軽口を叩けば、会話も弾む。
僕は満を持して(というか、お嬢ちゃんの為なんだけど)短冊を取り出した。
「天気も良いし願い事を書けばいいと思ってね。貧乏事務所にも実りある依頼が来ますように、とか?」
 どんな嫌味だよ。と王泥喜が唇をツンと尖らすのが可愛い。ふふっと笑うと王泥喜も笑顔を返す。
「そういう検事は、無罪を喰らいませんように、とかどうです?」
「そんな浪漫のない願いは、僕はしない。」
 おデコくんの笑顔を見ていると、近年感じる事の無かったトキメキとやらが浮かぶ。楽しいのだと、素直に感じた。
「帰って来る途中で、みぬきちゃんから見えるように窓辺に飾りましょうか。え、と筆ペンがいいかな、机に引き出しにあったような…。」
 ごそごそと机を探る王泥喜を身ながら窓辺に笹を立て掛けた。
「エアコンをつけてないから、遠慮もないねえ。」
 どこだっけと言っていた王泥喜は、再び顔を上げて五月蠅いと告げる。そして、じっと成り行きを眺めていた成歩堂がポツリと呟いた。
「給湯室に置いてあったんじゃないか?」
「なんて筆ペンが給湯室にあるんですか!!」
 一声吠えて、給湯室へと向かう王泥喜を見遣り、成歩堂は窓辺へ寄った。
笹に付けられた飾りを一瞥して短冊を手に取る。
「これ、牙琉検事の願いかい?」
 深い色をした瞳が射抜くように向けられる。それでも、唇に乗るのは笑みだ。
「…そう、だけど?」
 
『好きな人と幸せになれますように』

 そう綴った僕の短冊を、途端、成歩堂の指先が引いた。
 音さえたてずに枝から破がされていくのを見ていたけれど、止めようとは思わなかった。
 彼はそういう男だ。
 心を見透かすように視線を向けるくせに、僕の願いを聞き留めてなんかくれない。

 ペンを片手に戻ってきた王泥喜は笹を手にして、憤慨した表情を浮かべた。
「ちょ、検事、なんで書いてない短冊が笹についてるんです!
 どうやって願い事を掛けっていうんですか!」
 僕が両手を竦めてみせれば、追求なぞ無駄だと踏んだらしく、視線を短冊へ戻した。思案していたようだが、ふっと顔を上げる。
「…検事の分なんて付いてないじゃないですか?」
「願い事なんてなかったりして、ね。」
 クスクスッと成歩堂が笑う。王泥喜が怪訝な表情で伺うから、僕はふるりと首を振った。

「そう?つけるの忘れちゃったかも。」

 ペンを貸してくれるかな?

 ニコリと笑うと、やはり怪訝な表情をしながら王泥喜は手にしたペンを差し出した。背中越しに、成歩堂が口端を緩めるのが見えた。
 無造作につっこまれたジャージのポケットには、握りつぶされた僕の(願い事)があるのだろう。
 
 振り向いてくれないくせに、次の恋を邪魔しないで

「はい、どうぞ。」
 差し出された筆ペンを受け取って、王泥喜に一番の笑顔を送る。一瞬だけ彼が息を飲むのが見えて、それがやけに可愛らしかった。
「なんて、書こうかなぁ…。」
 勿体ぶった仕草で王泥喜の肩に凭れ、机の短冊から若い弁護士へと視線を移した。

 それでも未練がないとは言えない僕の心が、邪魔だった。

 



俺を素直にしたひとへ

 私室の窓からは囲いのような滝がとその上に広がる満点の星が見える。
ピオニーは夕餉を終えた後ソファーに腰掛け、ぶうさぎを愛でながらジッと外を見つめていた。
 俺はと言えば、ぶうさぎ(ジェイド)をブラッシングしながら、時折横顔を眺めていた。特別な感情が無い訳ではなくとも、どうにも一目を引く男なのだ。何の飾りがなかったとしても、頭上に冠を掲げる人。
 
「今夜は確かホドの行事だった。」
 一度聞き漏らして、え?と顔を上げれば、もう一度ガイラルディアと名を呼ばれた。
「願い事を叶えて貰うって、楽しそうだな。」
 クスリと笑う顔にガイは苦笑を漏らす。そして、ぶうさぎの世話から手を放して主君の横へ寄った。
「陛下、七夕というホドの行事がどうして行われるかご存知ですか?」
「恋愛に夢中になって仕事をしなくなったので、神様が一年に一回だけしか会えなくした…だったけか?」
 そうして、ぶうと膨れた皇帝は四十に手が届く年齢には見えなかった。可愛らしいという感想が素直に出てくるのはどうなんだろうとガイは思う。
「それが何だ、俺には年に一回だって再会する恋人もいないのに仕事は山積みだ。」
 ポツンと呟くピオニーの態度はどことなく寂しげで、見つめるガイも表情もくすんだ。

 年に一度、恋人が出合う日。けれど旦那は不在だ。

 それと言葉にすることがなくても、こうして側近くに仕えていれば自然と伝わってくるものだろう。
 憂う表情をみせずとも、澄んだ碧眼は揺れるものだ。
「ええと、陛下。仕事が山積みなのは自業自得ではないかと…「で、お前は何をお願いするんだ。」」
 呆れるほどに、堂々とガイの進言がスルーされた。
「…陛下は何か願っていらっしゃったんですか?」
「鬼畜眼鏡が可愛くなりますように。」
 どんな神でも荷が勝ちすぎるだろう願いに、力ない笑いしか浮かばなかった。仕方なく天を仰ぎ答えを探した。
 綺麗な綺麗な星空。
「今日が無事に終わりますように。」
「なんだその爺臭い願い事は、神さまだって余りのツマラナサに臍曲げるぞ。」
 ハァ?と顔を歪めるが、ピオニーの願いを聞いた後で、負担になる願いなど告げられそうにない。
「ケチが入らないのが一番です。」

 ピオニーの話は、一般的にそうと言われているものだが、ホド本国で伝えられているものは違う。
  二人は仕事をサボっていた訳ではない。試練を乗り越えて真面目に仕事をこなしたけれど、彼等の仲に嫉妬した舅が娘とその婿を引き裂いたというのが真実だ。えげつない現実味を帯びた話だけれど、愛しい娘を誰にも渡したくないと願う父親の気持もわからないではない。
 欲しい相手がひとりであるなら尚更のこと。
悲しい恋人達に同情した神さまが、一年に一度だけでも会えるようにと手を尽くした後に、願いを叶える力などさほどにあるように思えない。
 だから、ケチもつかずこうして過ごせるのが一番。
 愛おしい娘を奪う相手には容赦のない舅を、自分に例えるのかそれとも旦那を当てはめるのか、思うところは勝手だろうけれど。

「綺麗ですね。」
 天の川を眺めるアナタの横顔を盗み見れば、つい言葉が漏れる。
「そうか?、遠くの星など大した事はない。」
 クスクスと笑い、碧眼が笑う。
「もっと綺麗なもの、あるだろ?」
 答えを返す事などないのに、アナタは答えを知っているように言葉が続く。
「そいつは、触れてみなけりゃわからないものかもな。」

 平穏無事に終われそうだった一日を棒に振りそうなのに、素直に手を伸ばしてしまうのはアナタのせい。



※某さま
こんな散文で申し訳ない・汗
お仕事が落ち着いたら、続きも書きたいと思いますので、気長にお待ちくださいませ。
PR
コメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
忍者ブログ [PR]